気候変動の影響を抑制する取り組みがさまざまな業界で広がるなか、適切な対策を講じるためには、主要な発生源を特定することが不可欠になっています。温室効果ガス排出量を最も多くかつ最も急速に増加させている発生源の一つはまぎれもなく輸送であり、特に貨物輸送は大きな要因です。
この状況を踏まえ、Kourosは再生可能エネルギーへの転換における新興リーダーとして、道路貨物輸送の抜本的な改革に着手しました。同社は循環型ビジネスモデルを採用し、水素燃料トラックを運輸業にとっての現実的な選択肢とすることを趣旨とした、新会社設立構想を立てました。新会社は主要技術を活用して二つの重要な能力を実現する必要があります。第一に、バイオマスを熱分解して水素を製造できること。そうすることで強力なカーボンシンク(炭素吸収源)(※2)を作り出す機会を提供し、土壌と生物多様性の保全に貢献できます。第二に、この種では初となる水素トラックの組み立てにおいて業界のリーダーを目指すことです。
Kourosは野心的なビジョンと事業の潜在的な影響力を考慮し、frogをはじめとするキャップジェミニ・グループと広く連携することにしました。そして、水素を使用して大型車両の脱炭素化を実現する革新的なモビリティサービス・プラットフォーム「Hyliko」を立ち上げることで、プロジェクトを始動しました。
コンセプト設計から新会社設立まで、ビジネスを構築する
新会社設立とプラットフォーム構築に向けて共同作業を開始するにあたり両社は、「水素への移行を迅速かつ効率的に実行できるか?」、「水素トラックを競争力のある価格で提供できるか?」という二つ重要な問いに肯定的な答えを出す必要がありました。
Kourosは、キャップジェミニ・インベント傘下のfrogをはじめさまざまな専門家チームと協働し、コンセプトを進化させていきました。その過程では、ストラテジストとデザイナーのグループが中心となってプロジェクト推進を担い、新会社の循環型ビジネスモデル・投資ケース・市場進出戦略を洗練させ、最終的な立ち上げを支援しました。この協働を通じてKourosとキャップジェミニのチームは、「Hyliko」の立ち位置をアイデアから成熟したコンセプトへ、さらには完全な法人企業へと速やかに進化させていきました。Hyliko社は大型貨物輸送に照準を当てゼロエミッション/カーボンネガティブに取り組む初のモビリティベンチャー企業です。
より環境に優しいトラックの開発
Hyliko社の設立後、キャップジェミニ・エンジニアリングのチームはグループの専門家と共に、新会社のビジネスモデルの重要な柱となる水素燃料トラックの設計・組立に取り組みました。こうしたトラックはまだ市販されておらず、また自動車メーカーとの契約も完了していなかったことから、両社は中間ステップとして、既存のバッテリー式EVトラック(BEV)を取り入れました。比較的新しい中古ディーゼルトラックを電気自動車に改造することで対応しました。
この取り組みには、機械・ソフトウェア・インターフェースを実装するためのヒューマンマシンインターフェースの設計およびキャビンコントローラーのデコーディングが含まれます。取り組み全般を通じてHyliko社とキャップジェミニ・エンジニアリングは、ソフトウェアエンジニアリング、CANライブラリ(※3)ディダクションにおけるシステムテスト、トランスレートコントロールユニットの開発、車両状況テスト/エラーメッセージ識別、電気エンジニアリング、機能適合/統合において協働しました。
Hyliko社、運送会社との連携を開始
Kouros社とキャップジェミニは「Hyliko」の市場導入を通じて、独自の位置づけをもち、気候変動を抑制する取り組みに貢献していくための備えとなる世界水準のモビリティプラットフォームを展開しています。水素とトラックをAs a Serviceとして提供することで、カーボンネガティブを実現するための技術と、車両リースやメンテナンスサポートなどの便利な機能を組み合わせて利用できるようにしています。そうすることでクライアントが炭素燃料貨物車両から移行しやすい環境を作ると同時に、生物多様性の保全にプラスの影響をもたらすことができます。
Hyliko社は設立から一年も経たないうちに初の契約を締結し、2023年末までに水素燃料トラックを納入します。同社はキャップジェミニの支援のもと、未来に向かって歩み続けています。イノベーションの進化と認知向上が進むことで、自動車業界におけるカーボンネガティブに向けた活動への影響力を高めていくでしょう。