ビジネスや社会の未来を形づくる重要なテーマを取り上げ、最新の知見やアイデア、インサイトをご紹介します。
業界の深い知見と、未来をリードする経験を持つパートナーをお選びください。 ※サブメニューの「*」は英語ページです。
進化し続けるポートフォリオで、お客様の変化にお応えします。 ※サブメニューの「*」は英語ページです。
多様な人材や専門家が集う環境で、ともに変化を生み出しましょう。
最新のニュースやストーリーをチェックし、過去のアーカイブもぜひご覧ください。 ※サブメニューの「*」は英語ページです。
テクノロジーの力を活用し、企業の変革とビジネス運営を支援するグローバルリーダーです。 ※サブメニューの「*」は英語ページです。
世界No.1(6年連続)
ブランドについて
テクノロジーパートナーについて
Cloud
Management team
Artificial intelligence
世界の航空宇宙・防衛(Aerospace & Defense:A&D)産業は、いま構造転換の真っただ中にある。 防衛予算の拡大、サプライチェーン再編、地政学リスクの高まり、そしてAI・デジタルツイン・MBSE(Model-Based Systems Engineering)を中心としたデジタル技術の進化が、競争のルールそのものを変えつつある。 こうした環境下で企業に求められているのは、単なる製造能力ではなく、「より速く設計し、より柔軟に生産し、より長く運用価値を提供する能力」である。
キャップジェミニの「Aerospace & Defense Engineering and R&D Pulse 2026」は、この変化を象徴するレポートであり、世界のA&D企業がAI、デジタルツイン、グローバルエンジニアリングモデルを活用して競争力強化を進めていることを示している。
調査によれば、世界のER&D(Engineering Research & Development)リーダーの70%が「Time-to-Market(市場投入スピード)」を最重要経営指標の一つとして位置付けている。さらに、今後2~3年間で平均10.5%のコスト削減、約8.7%の開発期間短縮が必要と認識されている。
一方、日本市場では、防衛力強化と航空宇宙産業再活性化が同時に進んでいる。 日本の航空宇宙・防衛企業にとって、この変化は単なる技術革新ではない。 GCAP(Global Combat Air Programme)やEdgewing設立、航空機電動化(ECLAIR)コンソーシアム、JADCを軸とした民間航空機開発支援など、日本企業が国際共同開発の中核へと進化する機会が訪れている。
それは「世界最高品質のサプライヤー」から「グローバル市場を主導するデジタル・システムインテグレーター」への進化を実現できる歴史的な機会である。
その成長機会を競争優位へ転換できるかどうかは、従来の製造能力ではなく、企業変革のスピードによって決まる時代に入った。
先の調査によれば、日本企業の60%が「イノベーション速度を高められなければ今後5年以内に市場シェアを失う」と考えており、85%がサプライチェーンリスクを最大の経営課題と認識している。また92%が今後2~3年間でAI投資の拡大を予定している。これは、日本企業自身が現状維持では競争力を維持できないことを認識している証左である。
経営者がまず理解すべきことは、今後の競争軸が「何を作るか」から「どのような仕組みで開発し、供給し、運用するか」へ移行していることである。
日本企業はすでに世界有数の国際サプライチェーンプレイヤー。 GCAPは新しい挑戦である一方、日本企業はゼロからスタートするわけではない。日本の航空産業は過去30年以上にわたり、グローバルプログラムに参画し、航空宇宙・防衛産業はこれまで高品質な製造力によって成長してきた。しかし今後の収益源は、設計データ、ソフトウェア、AI、運用データ、ライフサイクルサービスへ移る。装備品や航空機そのものではなく、それらを継続的にアップデートし、運用し続ける能力が企業価値を決定する時代になる。
その象徴がGCAPである。
GCAPは単なる次世代戦闘機開発プロジェクトではない。本質は、AI設計、MBSE、デジタルツイン、ソフトウェア定義型システム、国際共同開発を前提とした新しいエンジニアリング手法を獲得する国家レベルの変革プロジェクトである。経営層はGCAPを一事業として捉えるのではなく、全社の開発・設計・生産・保守プロセスを変革するためのプラットフォームとして活用すべきである。
GCAPで必要となるAI設計、MBSE、デジタルツイン、ソフトウェア開発は、次世代民間航空機やAAMにおいても共通基盤となる。 つまり今後、防衛と民間航空は技術的にますます接近していく。
OEMからライフサイクルパートナーへ。 日本企業のもう一つの強みはOEMおよびMRO領域である。 日本企業は長年にわたり、OEMとして開発・製造・保守整備を担ってきた。
防衛装備品においては、開発期間よりも運用期間のほうが圧倒的に長い。 防衛・航空宇宙産業の競争力は、製造能力からライフサイクルマネジメント能力へ移行している。
今後の顧客である政府・軍・航空事業者が求めるのは、装備品の納入だけではない。AIによる予兆保全、運用データ分析、サプライチェーン可視化、継続的なソフトウェア更新、MRO(保守・整備・運用)サービスを含めた長期的な運用価値である。日本企業は高い信頼性と品質を持つ一方で、この領域の事業化はまだ発展途上にある。ここに大きな成長余地が存在する。
AIはもはや研究開発部門の実験テーマではない。
日本企業のAI関連投資はER&D予算の平均10.5%に達し、世界平均を上回る水準にある。日本企業の約9割がAI投資を拡大する予定であり、多くの企業が設計期間短縮、生産性向上、コスト削減、保守業務高度化への活用を期待している。今後の経営課題はAIツール導入ではなく、AIを前提としたエンジニアリングプロセスの再設計である。
特にAIが大きな変革をもたらすと考えられている領域は、「Maintenance & Support」、「Documentation & Compliance」、「Research & Concept Development」である。
これはGCAPや将来航空機開発において極めて重要である。
なぜなら第6世代プラットフォームでは、システム要求の爆発的増加、ソフトウェア複雑化、サイバー要求への対応、国際認証・セキュリティ要求が発生するためである。
欧州企業は、すでに新しいエンジニアリング手法を適用し、AI活用を加速させており、例えばAirbusはSkywiseプラットフォームを通じて予知保全を実現し、生成AIを活用した技術文書管理やナレッジ活用を推進している。さらに全社で600を超えるAIユースケースを展開している。
Rolls-Royceはエンジンデータを活用したAIベースの予知保全により、年間約400件の予期せぬメンテナンスイベントを回避し、設計から運用までをつなぐデジタルスレッドを構築している。
またBAE SystemsはMBSE、Digital Twin、AIを活用したデジタルエンジニアリング環境を整備し、複雑な防衛システム開発の効率化を進めている。
GCAPに参加する日本企業も、こうした先進事例から学ぶべき局面に入っている。
同時に、サプライチェーン戦略も経営トップのアジェンダとして再定義する必要がある。
地政学リスクや輸出管理強化によって、供給網の安定性そのものが競争力となっている。多くの日本企業が代替調達先の確保、供給網の可視化、デジタルツインを活用した需要予測やリスク分析を進めている。これからの競争では、優れた製品を作る企業よりも、安定的かつ迅速に顧客へ届けられる企業が市場を獲得する可能性が高い。
したがって、防衛・航空宇宙・重工業企業の経営者には、次の4つの意思決定が求められる。
日本企業は品質、信頼性、製造技術という世界有数の強みを持っている。しかし今後10年で勝者となる企業は、その強みをデジタル技術、AI、国際連携と結び付け、新たな価値創造モデルへ転換できた企業である。
目指すべき姿は、世界最高品質の製造業ではない。
グローバルな安全保障と航空宇宙イノベーションを牽引する「デジタル・システムインテグレーター」へ進化できるか? それこそが、日本の航空宇宙・防衛産業の経営者に突き付けられている真の問いである。
「Aerospace & Defense Engineering and R&D Pulse 2026」のキーデータ
サプライチェーンは日本企業最大のリスク
日本企業が今後3~5年で重大リスクと認識している項目は、
である。特にサプライチェーンリスクは世界平均62%に対し、日本は85%と突出して高い。 また、53%の日本企業が関税・貿易摩擦によってER&D活動に影響を受けていると回答している。
防衛・航空宇宙産業においては、部品調達や輸出管理、供給網のレジリエンスが競争力そのものになりつつある。
A&D業界が直面する最大の経営課題
航空宇宙・防衛セクターでは、
している。
注目すべきは、技術課題以上に「人材」と「組織変革」がボトルネックになっている点である。
AIはもはや実験ではなく経営投資
日本企業では、
さらに、
となっており、調査対象国の中でも積極的な投資姿勢が見られる。 つまり日本企業はAI活用に慎重という従来イメージとは異なり、ER&D領域では世界トップクラスの投資意欲を示している。
AIで期待されるインパクト
日本企業はAI活用によって、
を期待している。
特にAIが変革すると期待されている領域は、
である。
これは防衛装備品ライフサイクル管理やMRO事業との親和性が極めて高い。
GCAPで獲得すべきものは機体ではなく能力
日本企業の74.7%が今後、ER&D部門の再編や組織改革を進める予定と回答している。これは調査対象国の中でも最高水準である。
GCAPに参画する日本企業に求められるのは、
を個別プロジェクトに閉じ込めず、全社標準能力として展開することである。
GCAPで得るべき最大の成果は戦闘機そのものではなく、「次世代エンジニアリング企業へ進化するための変革能力」である。