持続的かつ収益性の高い成長を目指す成熟企業にとって、消費者が何を求めているのか、なぜ商品やサービスを購入するのか、あるいは購入を見送るのかを理解することは重要です。また、そのニーズの変化を継続的に把握することも欠かせません。 

こうしたインサイトは、APAC地域の保険会社が市場戦略を策定し、新商品、テクノロジー、外部パートナーシップへの投資優先順位を決定するうえで重要な判断材料となります。 

今回の調査結果からは、現在の生命保険市場において需要そのものが不足しているというよりも、保険料と保障内容のバランスに対する理解不足や、商品価値・保障内容に対する理解不足が加入の障壁となっていることが示されています。 

複雑さと分かりにくさが保険加入の障壁に 

調査によると、多くの消費者は生命保険が提供する保障に関心を持っている一方で、それが現在の自分のライフステージにどう関係するのか十分に理解できていない状況が見られます。 

  • APAC地域の消費者の4分の1は、生命保険が現在の自分には関係ないと考えている。一方で、リビングベネフィット特約や柔軟な保険料設定など、短期的なメリットを提供する仕組みが広く存在しているものの、その価値は十分に理解されていない。 
  • 44%の消費者は生命保険に対して混乱や不確実性を感じている。 
  • その結果、26%が加入手続きを完了する前に離脱している。 

これらの結果は、短期的な契約獲得だけでなく、長期的な顧客関係の構築を目指す保険会社にとって重要な検討課題であることを示しています。 

コミュニケーションや教育施策の強化は引き続き重要であるものの、それに加えて、商品価値の伝え方や顧客との関係構築、契約後の顧客エンゲージメントのあり方についても見直しの余地があることが示唆されています。 

調査では、以下のような傾向も確認されています。 

  • 消費者の39%は、生命保険に関する情報が専門的すぎる、または販売色が強すぎると感じている。 
  • 契約者の33%は、保険加入後に保険会社からほとんど連絡を受けていない。 

こうした状況は、保有契約の失効率や早期解約率の上昇と関連している可能性があります。調査によると、解約した顧客の約半数は、保険会社が獲得コストを回収する前の加入後3年以内に契約を終了しています。 

このことから、顧客接点や販売戦略の見直しとともに、先進的な取り組みを行う保険会社の事例を参考にする余地があると考えられます。 

優れた保険会社はどのように顧客と関係を築いているのか 

生命保険の価値認識におけるギャップは以前から指摘されてきた課題です。しかし近年は、対象市場の縮小や保険以外への支出拡大、営業人材の高齢化などの要因も重なり、その重要性がさらに高まっています。 

調査では、全保険会社の約10%を占めるトップランナー企業が、顧客ニーズを中心に据えた戦略によって特徴的な成果を上げていることが確認されています。これらの企業は、長期的な顧客価値の提供を重視し、商品設計、業務プロセス、コミュニケーション、パーソナライズされたサービス提供の高度化に取り組んでいます。 

その結果として、以下の指標が確認されています。 

  • 過去3年間の収益成長率は同業他社より41%高い。 

保有契約の失効率は12%低い。これらの結果から、顧客中心のアプローチは業界における参考事例の一つとして位置付けることができます。 

顧客主導の成長を実現するための3つの優先課題 

調査結果は、潜在的な顧客ニーズを事業成果につなげるうえで、顧客理解に基づく戦略が重要であることを示しています。 

一方で、多くの企業では依然として商品中心・販売中心のアプローチが主流となっています。今後は、顧客ニーズに即した価値提案と運営モデルの構築に加え、統合データやAIを活用した顧客理解の深化が重要になると考えられます。 

そのための戦略的な重点領域として、以下の3つが挙げられます。 

1.適切な商品 
消費者ニーズの変化に応じた、シンプルで分かりやすい保険商品・サービスの提供 

2.信頼できる人材とパートナーシップ 
アドバイザー、ブローカー、エコシステムパートナーを通じて適切なタイミングで透明性の高い助言を提供すること 

3.高度なデータ・テクノロジー基盤 
統合されたデータを活用し、プロアクティブかつ高度な顧客対応を実現すること 

これら3つの要素は、顧客と保険会社との長期的な関係構築を支える重要な基盤となります。今後の生命保険業界においては、顧客の信頼とエンゲージメントをいかに高めていくかが、持続的な成長を考えるうえで重要なテーマの一つになると考えられます。