ここ1年で、先進的なAI推論モデルを基盤とする「AIエージェント」が、企業や組織の注目を急速に集めています。AIエージェントは2028年までに世界全体で最大4,500億ドルの経済価値を生み出すと予測されており、その導入はもはや「戦略上の必須条件」となっています。 

エージェント型AIは私たちに大きな転換をもたらしています。従来の単なる業務支援ツールや決められたタスクを処理するだけの仕組みから、人間の介入を最小限に抑えつつ、業務の始めから終わりまでを自律的に取り仕切る「チームの一員」へと進化したのです。 

日本でも当然、この活用トレンドに追随しています。例えば:

  • 調査対象となった国内企業・組織の100%が、AIエージェントの活用に関心を示している 
  • 98%が、ソリューションプロバイダーとの提携による導入の加速を求めている 

こうした強い活用意向により、日本は「エージェント型AIの普及において、成長途上のリーダー」カテゴリーに位置づけることができます。しかし、熱意だけではAIのビジネス導入は成功しません。重要なのは体系的なアクションです。キャップジェミニの研究レポートでは、次の3つの重要なアクションを指摘しています: 

1.プロセスを再デザインし、ビジネスモデルを再構想する

AI導入の勝敗を決めるのは、目に見えて測定できる成果です。組織はまず、カスタマーサービス、IT、セールスなど、AIエージェントが即座に価値を提供できるインパクトの大きい分野を特定することから始めるべきです。AIエージェントはプラグ&プレイ(つなぐだけですぐに使える) ソリューションではありません。反復的かつルールに基づくタスクを伴う、自動化や高度化に適した部門にターゲットを絞りましょう。そこで早期に成果を得た後は、次の3年間でオペレーション、研究開発、マーケティングなど、より複雑な分野へ段階的に配備を拡大することが重要です。 

目標は、単発のパイロット (実証実験) を超えて、測定可能な成果を見据えた総合的な導入プランを構築することです。 

2.人とAIのコラボレーションに向けて、働き方を改革する 

AIエージェントを単なるツールからチームの一員へと進化させるに伴って、働き方の改革も必要です。パイロットや導入段階において、国内企業・組織の100%が「AIを平均的に、または平均以上に信頼している」と回答しています。しかし、世界の傾向を見ると「仕事を奪われてしまうことに対する従業員の不安の高まり」を示唆しています。これに対処するため、企業や組織は先を見越したスキリングと役割の見直しに優先的に取り組むべきです。従業員がAIエージェントと補完し合う新たな能力を身につけられるよう、協業を基調とした組織カルチャーを築く必要があります。いわば「テクノロジーが人間の潜在能力を増幅してくれる環境」の整備です。 

3.自律性と管理・監督の間で、適切なバランスを取る 

急速に普及しつつある一方で、AIの完全な自律化の実現は難しいのが実態です。リスクは最小限に抑えつつビジネスへの効果は最大化するといった、「人とエージェント間の最適な労働配分率」を見極める普遍的な黄金バランスなどというものは存在しません。 

実際、日本の企業や組織は「人による管理・監督」に強いこだわりを持っています。83%が、重要な意思決定のポイントでは人によるチェックを想定しているという事実は、戦略上の優位性につながります。このアプローチにより、AIエージェントを効率的に稼働させつつ、人の判断を意思決定の中心に据えることができるからです。さらに、国内企業・組織の78%が、今後1〜3年の間に人間の監督下で自律したチームの一員としてAIエージェントを統合する計画を持っており、これは世界平均の38%を大幅に上回っています。 

企業が責任を持ってAIの導入規模を拡大するためには、エージェントにどこまで自律性を許容するかを明確に定義し、説明可能性と追跡性 (トレーサビリティ) の仕組みを実装することが極めて重要です。倫理基準や透明性を維持することは、信頼を獲得し、リスクを全般的に軽減する上で不可欠となります。 

すべては「テクノロジーによって人間のエネルギーを解き放ち、包摂的で持続可能な未来を」という、キャップジェミニのミッション・ステートメントに帰結します。日本企業は、強い意志と断固たるアクション (プロセス見直し、働き方改革、ガバナンス) によって、構想を実装につなげ(Make It Real – キャップジェミニの新ブランド・スローガン)られるのです。ご自身の企業や組織が、このトランスフォーメーションをどのようにリードできるのかにご興味がある方は、フルレポート “The Rise of Agentic AI(英語版)” をぜひダウンロードしてください。 

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